認知症予防に良い、「30分以内の昼寝」って?
中等度アルツハイマー病でさえ、脳萎縮が確認されるのは40%に過ぎない!
PIB-PET陽性率:健常者10〜15%程度、軽度認知障害:約60%程度!
治験最新情報!
2008年4月5日(土曜)、ホテルニューオータニにおいて、アルツハイマー病研究会が開催されました。昨年までは京王プラザで開催されておりましたが、年々参加人数が増え、今年は千人を超える規模となったため、会場が変更されたようです。東京駅からタクシーで1700円程度の距離(15分程度)ですから、まあまあ近いです(地下鉄利用すると、半蔵門線まで歩く距離が長く時間ロスが多い!ということでタクシー利用となりました)。
ほとんど毎年「一泊」で参加してきましたが、今年は、日帰りで参加してきました。6時過ぎに家を出て、帰ってきたのはPM9:30頃、疲れましたが、とっても良い勉強になりました。
以下に、私が聴取した講演の中で、印象深く残った講演内容をご紹介します。
プレナリーセッション1では、ギリギリまで三重大学の先生とお話していましたので入室が遅くなり、後ろの方の席か、最前列しか空いておらず、最前列を選択しました。写真撮影がしやすく好都合でした。
◎プレナリーセッション1(この症例をどう診るか 座長:鳥取大学・浦上克哉先生&今津赤十字病院・田北昌史先生)
1)症例提示・1(京都府立医科大学 中川正法先生)
MMSE10点で、アリセプトを5mgから10mgに変更して、進行がやや遅くなった症例が提示されました。
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質疑応答・1(質問者 笠間) 質問: この症例はアリセプト5mgでは「ノンレスポンダー」と言えますが、5mgでは「ノンレスポンダー」であったのに、10mgに増量したらレスポンダーになる割合は、既にデータとしてまとまってきておりますか? 自験例では如何ですか? 回答: データは、まだ出ていません。 自験例では、5mgを10mgに増量したら、5名中3名で、進行がやや遅くなりました。 |
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質疑応答・2(フロアーより) 質問: 軽度アルツハイマー病でも、最初からアリセプトを10mgを処方した方が、長い目で見ると、進行を遅らせるという国内データは発表されていますか? 回答: 国内データはありませんが、海外データではそのような報告があります。 |
2)症例提示・2(愛媛大学 清水秀明先生)
動画を提示して、診断・重症度・失語症のタイプなどを問いかける症例が提示されました。
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質疑応答・1(質問者 笠間) 質問: 正解は、「感覚性失語+語想起障害」と記載されておりましたが、懐中電灯を見て、自発的に「懐中電灯」と言えないのに、「運動性失語はない」と言い切れるのでしょうか? 回答: 演者の先生が回答に困られたため、共同演者の先生が回答されました。 確かに、「感覚性失語」と言うと間違いです。復唱が可能なので、「運動性失語」は無いであろうと思われます。正確に言うと、「超皮質性感覚失語」という表現が正しいです。 |
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質疑応答・2 フロアーよりコメント: 失語症があると「重症度判定が難しい」と演者の先生は言われましたが、正しくは、「失語症があると、認知機能障害の重症度の判定が難しい!と言うことであって、重症度の判定が失語症の存在により難しくなる!ということではないです(=このコメンテーターの方が言いたいのは、失語症が存在するから既に「中等度のアルツハイマー病」であり「軽度ではない」と言いたいのである。 |
3)症例提示・3(水海道厚生病院 根本清貴先生)
MCIからアルツハイマー病へのコンバートはどの時点で起きたと言えるか!
初診時:MMSE27点、遅延再生のみ低下。家事に支障は来していない。
2年後:買い物はまだ自分で行っているが、家計簿はあまりつけなくなった。同じものを買ってしまうことがあった。
3年後:礼節は保たれている。頼んだことをきちんとできないことがある。庭の草取りは全くしなくなった。
4年後:場所が分からない。家事はほとんどできない。
どの時点までMCIと判断するか? どの時点で、アルツハイマー病のコンバートしたと判断しアリセプトを開始するか?
正解は、3年後がアルツハイマー病にコンバートした時期ということのようであったが・・。
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質疑応答(質問者 笠間) 質問: まさしくこの設問の回答の重要な鍵を握るような論文が、昨日のm3.comに発表されていました。 アルツハイマー病協会が3月18日に出した最新の報告で、「認知障害と認知症との境界を示す重要な特徴のひとつが生活自立能力である!」と明言されています。ただ、明言されているとは言っても、同じレベルの認知障害であっても、田舎で暮らしている方は「軽度認知障害」と診断され、都会暮らしの場合には「認知症」と診断されてしまう場合が出てくるというもあり得ますから、その辺りをどう判断するかですよね。 そういう点から考えると、家計簿はあまりつけなくなった。同じものを買ってしまうことがあったということは、生活自立能力が低下していることは明らかであり、2年後の段階でアルツハイマー病にコンバートしたと私は考えます!と私見を述べたが、「結論」は出なかった! |
4)症例提示・4(さわらび会福祉村病院 赤津裕康先生)
一見DLBの樣相を呈しながら、病理学的には、MSA-P&アルツハイマー病の合併のある症例が提示された。
病初期の症状の特徴、CTで注目すべき場所などが解説された。
◎トラックセッション1(認知症前駆ステージ、早期認知症の診断スキルアップを考える 座長:金沢大学・山田正仁先生&筑波大学・水上勝義先生)
1)専門医はMCIをこう捉えている(鳥取大学 浦上克哉先生)
総説
2)MCIの病理学的基盤・ブレインバンクからの報告(東京都老人総合研究所 村山繁雄先生)
CDR0.5の症例で統計を取ると、意外とアルツハイマー病以外に、嗜銀性顆粒型認知症が多いことが分かった。
私の感想:
理論整然としており、良い講演内容でした。
3)MCIの原因となる疾患の診断と対応(筑波大学 朝田 隆先生)
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質疑応答(質問者 笠間) 質問: 演題と直接関係のない質問で申し訳ないのですが、朝田教授には是非一度お伺いしたいことがありましたので教えてください。 ぼけ予防の通説の検証(1,2)では、『週3〜5回、1回20〜60分、音楽に合わせてステップを踏む簡単な有酸素運動の実施&また魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などを含む栄養補助剤を毎日取るとともに、30分以内の昼寝をした結果、生活習慣を指導したグループでは認知症の発症率が3・1%だったのに対し、しなかったグループは4・3%にのぼったという予防効果が確認されました』が、講演会などでよく質問されるのが、「30分以内の昼寝」をどう実践するのか?という質問です。朝田先生は、具体的にどのように指導されているのですか? 回答: 手続き記憶などの能力を高めることが分かっているのですが、また後で詳しくお答えします。 講演会の休憩時間に: 朝田教授に名刺をお渡しし、回答の続きをお聞きしました。「REM睡眠などの本格的な睡眠状態に入ってはダメ! 面白くない講演会などの時にちょっとウトウトする程度の居眠りが手続き記憶などの能力改善に良いですよ!ということが分かってきているのです」と明快な回答を頂きました。 |
4)MCIの画像診断を考える・画像統計解析の観点から(埼玉医科大学国際医療センター 松田博史先生)
萎縮を認める頻度:
軽度認知障害 :15%
軽度アルツハイマー病 :25%
中等度アルツハイマー病:40%
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質疑応答(質問者 笠間) 質問: Dementia Japan 21(=最新号)で『現状のeZISでは,健常者にも無視できない脳血流低下が高率に描出される』ことが指摘されましたが、「松田先生の施設では、偽陽性率はどの程度でしょうか?」 回答: 「私もそのデータの話は聞いております」と松田先生は述べられましたが、まだ、「偽陽性率」のデータ解析は実施していない状況のようであった。 |
それにしても、中等度アルツハイマー病でさえ、脳萎縮が確認されるのは40%に過ぎない!とは。
いずれにしても、経時的にVSRADの数字の変化を追うことの重要性は、松田先生も指摘されていました。
5)MCIの画像診断を考える・PIB-PETによる画像診断の将来(東京都老人総合研究所 石井賢二先生)
PIB-PET陽性率:
健常者: 10〜15%程度
軽度認知障害: 約60%程度
アルツハイマー病:ほぼ100%
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質疑応答: 多くの質問がなされました。私もお聞きしたいことがあったのですが、時間の都合で質問することができませんでした。 |
私の感想:
私が今から11年前に、国内初の痴呆予防ドック(平成9年5月19日付読売新聞「こちら医療情報室」)を立ち上げたときは、今の医療機器に比べれば、本当に低レベルであった。まさに隔世の感があります。
6)Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)プロジェクトの現状・MCIの縦断による超早期認知症診断&治療への展望(東京大学 岩坪 威先生)
米国のADNIの現状
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質疑応答(質問者 笠間) 質問: 午前のセッションでも少し述べましたが、昨日のm3.comに発表されていたデータによれば、アルツハイマー病協会が3月18日に出した最新の報告によれば、MCIは9つの亜型に分類されており、そのうち「アルツハイマー病前駆症状」はたった34.2%に過ぎませんでした。 であれば、石井先生が発表された、軽度認知障害におけるPIB-PET陽性率(=約60%程度)は決して悲観するデータではないと思います。 で、J-ADNIでは、対象が「アルツハイマー病前駆症状」のMCIだけにきちんと絞られるのでしょうか? 回答: amnestic MCIとMultidomain MCIの2つが対象になります。 上記を聞いて思ったこと(指摘はしなかったが): となると、朝田教授が先程の講演の中で、脳血管性MCIは「Multidomain MCI」を来しうる&うつは「amnestic MCI」も「Multidomain MCI」も来しうると述べていたから、J-ADNIの対象に、「脳血管性MCI」&「うつ」も混入する可能性があると言うことになる! やはりどうしてもデータのバラツキは出てしまうんだろうな・・と感じた。 |
7)日本版ADNIプロジェクト(J-ADNI)におけるMCIコホート(東北大学 荒井啓行先生)
非常によくまとまっており、スッキリした講演内容であった。
※stable MCIと進行型MCIのMRI所見の違い
stable MCIでは、MRIで虚血所見が目立つ!
進行型MCIでは、MRIで虚血所見がほとんどない。
→虚血が主因のMCIの多くが、stable MCIなのか!と私は感じました。
※PIB-PET陽性「健常者」では、徐々に記憶力が低下してくることが多い。ただし、それらの方が、MCIあるいはアルツハイマー病に至ったのか?に関しては、現状では不明です。
※現在の、治験の状況!
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フロアーからの質問に対して荒井教授は、明らかな症候性脳梗塞の既往が無ければエントリーOKとなっているので、無症候性ラクナはOK! 当然、ビンスワンガーもJ-ADNIの対象に紛れ込んでくることが予想されます。 上記を聞いて思ったこと(指摘はしなかったが): となると、脳ドック学会でよく議論となる、「本当に無症候性か?」ということが新たな論点にもなりそうですね。でないと、「どこまで調べて無症候性って言っているんですか?」と指摘されかねないですからね。 |
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フロアーからの質問: MCIからアルツハイマー病にコンバージョンした!とする基準は? 荒井教授の回答: その方の日常生活に、悪影響が及ぶようになったかどうか!という点でしか判断できません。 |
◎総合討論
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浦上先生コメント: 午前のセッションでも話が出ましたが、同じレベルの認知障害であっても、田舎暮らしの方では「軽度認知障害」と診断され、都会暮らしの場合には「認知症」と診断されてしまう危険性があるというのは実はとても大きな問題点なのです。 |
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司会者より石井先生に質問 質問: アミロイドのイメージと剖検所見は一致していますか? 石井先生回答: PIB-PETが実施されており、剖検できた症例は、まだ数例しかありません。 |
P.S:
睡眠不足でちょっと眠気のさした時間帯もありましたが、居眠りすることもなく、午前2時間20分、午後3時間40分、しっかりとメモし写真取りながらの聴取でしたので、疲れ切りました。
参加して、平素「疑問」に感じていることも、ほぼ解消しましたので、また今後の「講演会」などに活用できると思います。