アルツハイマー病研究会第11回学術シンポジウム(2010年4月17日 in グランドプリンスホテル新高輪) 


 今年も、アルツハイマー病研究会に参加してきました。
 本年度も、活発な議論が交わされ、有意義な会となりました。
 主催者の皆様に厚く御礼申し上げます。

 今回も、私の印象に残った演題を中心として、要点を簡単にご紹介いたします。


プレナリーセッション1(この症例をどう診るか)

症例1:繁田雅弘先生提示

フロアーより質問(榊原白鳳病院・笠間 睦)
Q:
 繁田先生は、この患者さんに対し、比較的早い段階で、「私は認知症だと考えている」と告知されていますが、私の場合は、癌の告知とは違い、認知症告知の場合、本人の判断力に多少なりとも低下があるため、告知後にいろんな支え(家族、ケアスタッフetc)が必要ですので、先ずは、ご家族に、「ご本人に病名を告知しても良いですか?」と聞いてから告知するようにしています。
 すると残念ながら、ほとんどのご家族は、「本人には伝えないで下さい」と希望されますので告知が進みません。
 私自身がもしも初期のアルツハイマー病であれば、比較的判断力が保たれているうちに、身の回りの整理をしたいので告知を希望するのですが、現実にはそのような状況で告知が進まず、任意後見制度も活用することができません。
 繁田先生は、告知に関してどのように取り組まれていますか?
A:
 認知症は、「
治療が必要な病気である!ということをきちんと伝える!ということが必要であるとある弁護士の先生から指摘されています」ので基本はそのような取り組みをしています。

症例2:東京慈恵会青戸病院・鈴木正彦先生提示

 脳血管性認知症+アルツハイマー病
フロアより質問
Q:
 この症例は、MSA-Pではないか? 眼球運動障害は無かったですか?

症例3:神戸大学・見市義亮先生提示

 進行性核上性麻痺+アルツハイマー病
フロアより質問
Q:
 この症例は、CBDでは?

症例4:大阪大学・高屋雅彦先生提示

 PS-1mutationを有しFTD症状を呈するアルツハイマー病
フロアより質問(榊原白鳳病院・笠間 睦)
Q:
 この方、MMSEは0点にも関わらず、RBMTの顔写真課題が「5人すべて正解」ということでしたが、RBMTの標準プロフィール点、スクリーニング点はどうでしたか?
A:
 他は、全くダメでした。
フロアより質問(榊原白鳳病院・笠間 睦)
Q:
 私の経験では、RBMTは、HDS−R、MMSEが27点とか28点でも検出してくれますので、かなり鋭敏な検査と考えておりますが、先生のご経験で、RBMTでさえ検出できない初期アルツハイマー病という方はご経験がありますか?
A:
 ありません。


午後は、私は、トラックセッション3(=認知症を包括的に支援するために)に参加しました。
演題1:認知症支援における医療の役割(あくまでも症候学にこだわる立場から) 滋賀県立成人病センター・松田 実先生
 家族の顔の誤認(アルツハイマー病:5% vs DLB:26%)
 家族が注意(怒る)した後で、誤認が起こりやすい!
フロアより質問(榊原白鳳病院・笠間 睦)
Q:
 DLBでは、SPECTによる研究で、後頭葉の血流低下が最初に来ますから、人物誤認がDLBに多いのは当然であると感じますが、誤認の、「対象選択性」はどうして起こりますか?
A:
 
怒っている人は、別人にしたいので!

演題2:認知症の経済被害、損失とその支援を考える

 演者:こだまクリニック ProMedico 臨床心理士 安田朝子先生
    ふじ合同法律事務所 弁護士 住田裕子先生
住田裕子先生講演
 交通事故に例えれば、「急に飛び出してはいけない」
 認知症に関しても、急に告知するのは好ましくない(しかし、住田先生自身は、自分自身が認知症であれば、やはり「告知は希望する」と話されていました)。
 医療費の明細書発行義務化により、「認知症専門医紹介加算」「アリセプト」などの文字によって患者さんに病名が伝わってしまうことは、「急な告知」と同じ観点からすると、要検討事項であろう・・という趣旨の発言をされていました。正確な発言内容は、冊子の印刷をお待ち下さい。
 私の「アルツハイマー病告知アンケート結果」をスライドにてご紹介頂きまして、住田裕子先生、誠に有り難うございました。

演題3:診療連携上の相互支援を再考する 熊本大学・池田 学 先生

 認知症疾患医療センターの役割を講演されました。

演題4:認知症の人を地域で支えるため医師に期待されること 独立行政法人国立長寿医療研究センター(前厚生労働省老健局 認知症対策専門官)・武田章敬先生

 武田章敬先生は、私と同時期に三重で仕事されており、お互いに名前は知っている仲でしたが、お会いしたのは今日が初めてです。素晴らしく良い先生です!
 「J-COSMICのデータがその後どうなったのか?、もし分かったら教えて下さい」とお願いしてしまいました。

演題5:取材を通して見えてきた認知症医療・ケアの課題 NHK制作局(文化・福祉番組)ディレクター・川村雄次氏

 「お福の会」の取り組みの紹介
 認知症のスピリチュアルケア

演題6:日本の認知症医療の10年後を考える 順天堂大学・新井平伊先生

 Flurizanも有効性は証明されなかった。
 PET-アセチルコリンエステラーゼ活性を見れば、ドネペジルの効果予測ができるようになる可能性がある。
フロアより質問(榊原白鳳病院・笠間 睦)
Q:
 PETからSPECTへ!という話は大変興味深いのですが、J-COSMICの結果はどうなっているのでしょうか?
A:
 治験に参加しておりませんので分かりません。

プレナリーセッション2

 アルツハイマー病に関する最近の話題(ADNIからの報告を含めて)
 東京大学・岩坪 威先生

岩坪 威先生講演:
 Morrisは、健忘型MCIは、very early ADと呼ぶべきと指摘しています。
 apoEε4陽性者では、健常者・MCIでも、60代から、アミロイド陽性例が多数出現します。
 
PETアミロイド陽性者は、ADにconversionする率が高い。

 質問「不可」でしたので、講演直後に、東北大学荒井先生にお聞きしました。
Q:
 J-ADNIでは、先生の提唱されている、非進行型MCIはどのように除外されているのですか?
A:
 除外されていません。健忘型MCIであればOKです。
私の印象:
 
J-ADNIにおけるMCIからADへのconversionの数字に関しては、非進行型MCIの存在を加味して数字を読み取る必要があるという状況のようです。


質問が多く、どうしても主張したかったことの一つである保険点数の問題点(=私は、日本認知症学会の専門医ですが、開業医の先生が私に紹介状を記載しても、認知症専門医紹介加算(100点)が算定できず、私の方も、この4月より新設された「認知症専門診断管理料(500点)」が算定できません。その理由は、行政に確認済みですが、算定条件が、実質上、「認知症疾患医療センターに限定」されているためです。この状況は、認知患者さんを丁寧に診ようという流れに水を差します!)に関しては、コーヒーブレイクで繁田先生に直訴!しました。すると繁田先生は、「確かに、その状況は、認知症診療にとって、好ましい状況ではないです! 6月の学会で提言します」とおっしゃって下さいまして、誠に恐縮しております。
 その後、質問する機会に恵まれましたので、本間 昭先生(&会場の皆様)にも、そのことはお伝えすることができました。

フリーディスカッション(18:40〜)

 2つ予定がつぶれたので、私も久しぶりに、フリーディスカッションに参加!
 乾杯の挨拶は、葛原先生でした。葛原先生、三重に戻ってこられていたんですね。
 本日のアルツハイマー病の参加人数は、
1560名です!と葛原先生より報告がありました。
 こだまクリニックの木之下 徹 先生に直接お礼を言えましたし(二人で写真撮影したのですがピンぼけでしたので写真送りませんでした。木之下先生、すいません)、以前から一度お会いしたかった「ふぁみりえ」の大谷るみ子さんにもお会いしお話を伺うことができました(ピントばっちりでしたので、写真送りますね)。10月に脳神経外科学会総会で福岡に行った際には、「ふぁみりえ」の見学(私なりの取材)を是非ともよろしくお願いします。
 本当に有意義な良い会となりました。




番外編
第3回・日本認知症学会教育セミナー(2010.4.18)
講演1:高齢者と認知症を取り巻く社会環境・社会資源、倫理的配慮 認知症介護研究・研修東京センター 本間 昭 先生

 認知症疾患医療センター:設置目標数=全国約150ヶ所
 小規模多機能型居宅介護事業所:
  平成21年度の介護報酬改定において、「認知症加算」が創設されたが、
  適用件数は約4割で、定額制で報酬が安いので普及していないのが現状。
 
若年性認知症コールセンター(平成21年10月1日開設):
  0800−100−2707

質問(榊原白鳳病院 ・笠間 睦)
Q:
 J-ADNIにおけるMCIからADへの
conversionの定義はどうなっているのでしょうか? 
A:
 国際基準に照らし合わせて判断されているのだろうと思いますが、詳細は、参加していないため不明です。
 
講演2:血管性認知障害 秋田県立脳血管研究センター・神経内科学研究部 長田 乾 先生
 脳血管性認知症:脳卒中後「3か月以内に発症する」という定義はあるが、その定義では、多発性ラクナ梗塞による認知症、Binswangerタイプのものは、非該当となってしまいます。
 前頭葉ループの走行しているところにラクナ梗塞が起きれば、認知症が引き起こされることになります。

講演3:アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症以外の変性型認知症 香川大学医学部・炎症病理学 池田研二 先生

 前方型認知症と後方型認知症
  前方型認知症(FTLD)は、性格変化・情動の障害をきたす。代表は、AGD、CBD、PSP。
  後方型認知症では、脳の道具機能が冒される。代表は、AD、SD-NFT。
 高齢者でピック病という診断名が書かれていたら、AGDのケースであることが多い。
 AGDでは、形態異常としては、左右差を伴う側頭葉内側面の萎縮と、塩酸ドネペジルの効果は限定的であり、ノンレスポンダーが多いことを、昨日のアルツハイマー病研究会で、国立精神・神経センター病院の齋藤祐子先生が発表していました。
 CBDにおける「他人の手徴候(alien hand sign)」は有名であるが、出現頻度は50%程度です。スリッパがうまく履けない(失行)などの症状として認められます。
 SD-NFT:約2/3で死亡時の年齢が90歳以上であり、SDATよりも更に高齢の認知症である。
 ハンチントン病:
  40歳前後の発症が多い。
  舞踏運動(chorea)と精神症状が現れる。
 ハンチントン病の精神症状:
  認知障害:注意の集中・持続が悪く、注意散漫。投げやり。
       抽象力・洞察力の低下。
       企画や計画的な行動が出来なくなる。
       注意の集中の悪さによる「物忘れ」。
  人格変化:易刺激性、感情易変、不機嫌であり反社会的行動などでトラブルを起こす。
       進行すると自発性低下、無為・無関心となる。
質問時間が短かったので、講演直後に、池田研二先生に直接お聞きしました。
Q:
 
非進行型MCIとSD-NFTは随分とオーバーラップしているのでしょうか?
A:
 おそらくそうだと思います。

 教育セミナーも有意義な良い講演が多かったです。座長の新井平伊先生、長時間に渡りお疲れ様でした。
 

 

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