AD患者でせん妄後に認知機能が急速に低下


〔米ミネソタ州セントポール〕

ハーバード大学(ボストン)神経科学のTamara GFong博士らは,せん妄の経験のあるアルツハイマー病(AD)患者では,未経験のAD患者よりも急速な認知機能低下が起こる可能性が有意に高いとする研究結果をNeurology20097215701575)に発表した。

原因回避や外来治療で予防可能

 せん妄とは軽度ないし中等度の意識混濁があり,錯覚や幻覚,精神運動性興奮を伴う状態のことで,支離滅裂な言動が見られる場合もある。せん妄状態になると重度の混乱や失見当識が起こる。

 今回の研究では,AD患者408例を対象に,試験開始時と6か月ごとに最低1年半以上にわたって記憶力ー思考力ー集中力(IMC)のスコアを調査した。この追跡期間中に72例がせん妄を経験した。

 解析の結果,せん妄経験があったAD患者では,なかったAD患者と比べてIMCスコアの変化度が3倍高いことがわかった。

 米国神経学会(AAN)の会員でもあるFong博士は「今回の知見は,せん妄経験のあるAD患者では未経験患者の18か月分に相当する思考力と記憶力の低下が,12か月間で起こることを示唆している」と述べている。

 せん妄経験群のIMCスコアの低下度は,試験開始時には年間平均25点であったのが,せん妄を経験した後では同平均49点に悪化していた。

 せん妄は,感染症や薬剤の副作用,手術に伴う障害や合併症の結果として起こることが多く,入院中のAD患者においては89%がせん妄を経験していると推算されている。

 同博士は「高齢者においてせん妄を回避すべき理由はほかにも多い。例えば,入院中のAD患者では,せん妄によって重度合併症の発症リスクが有意に高まるのもその1つだ。したがって,AD患者に対しては,(1)せん妄の監視を強化する必要がある(2)副作用としてせん妄が考えられる薬剤の使用を避ける(3)できる限り外来で治療して入院を避ける一などの予防戦略を採用することが重要になる」と述べている。

 同博士らは「せん妄は予防することが可能な病態である。今後の研究によって,せん妄を予防することでAD患者の記憶障害を改善または遅延できるか否かが解明されるものと期待している」と結論している。

 今回の研究は,マサチューセッツ・アルツハイマー病研究センター,米国立加齢研究所(NIA),アルツハイマー病協会の助成と,復員軍人局医療センターリハビリテーション研究センターのCareer Development Awardを受けた。

2009.7.2330日合併号 Medical Tribune

 

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