第74回・日本脳神経外科学会中部支部学術集会

 

 iNPH:今後の治療のポイント SINPHONIの結果を踏まえて!


ランチョンセミナー

北野病院 脳神経外科 石川正恒・部長先生

 

 久しぶりに参加した脳神経外科地方会! たまたますごく聞きたかった演題が、ランチョンセミナーで開催されていましたので、これを聞いて帰ってきました(会場は、愛知医科大学・たちばなホール 津から1時間25分でした。高速でかなり近くまで行けるようになっていました)。

 

特発性正常圧水頭症

1 症状

 歩行障害:小刻み、すり足、開脚

  出現率:90〜100%

 記憶障害:もの忘れ、自発性低下

  出現率:70〜90%

 尿失禁:

  出現率:50〜80%

 ※日本と国際ガイドラインの比較

2 CSF tap test

 原則:40〜50cc排除を、2日間続けてやりなさい!

 日本では、30cc1回のことが多いのが現状。

3 画像診断のポイント

 高位円蓋部脳溝の狭小化

4 iNPHとLOVAの違い

 LOVAを除外して検討しないと、純粋なiNPHのデータの集積ができない。

5 シャント手術(可変式シャント)の有効率

 有効率80%

  1年後も有効であった%: 69%

  1年後には無効となった%:11%

6 合併症(有害事例の件数)

 100例中15件

  肺炎: 3例

  脳梗塞:1例

  Ch SDH:1例 ※手術が必要となった有害事例は1例のみであった。

7 診断面での問題点

 tap testに関して

  感度:  91.25%

  特異度: 20%

  偽陰性率:36.4%

 ※CT脳槽造影の特異度は、tap testよりもさらに低い!

 

質疑応答

質問(笠間):

 倉本病院の笠間と申します。「もの忘れ外来」を行っていますので、けっこう、特発性正常圧水頭症(iNPH)疑いの患者さんが見つかります。ただ、手術目的で脳神経外科に紹介しても、典型的な症状・画像を呈しながら、「tap testが陰性でしたので」という理由で手術を受けずに戻ってくるケースが時折あるのですが、本来、あと36.4%も手術すれば良くなる方が居るのにきちんと診断されず良くなるチャンスを逃しているわけですよね! この方たちをどうすれば、きちんと診断していけるのでしょうか?

回答:

 米国では、tap testが陰性でも、症状・所見が典型的な場合、髄液の持続ドレナージを行います(=3方活栓がつけてあり、トイレなどの際には、活栓を閉じます)。150cc/日、髄液を抜いて、本当に「陰性」なのかどうか(=偽陰性ではないのか?)を見極めているようですが、なかなか日本ではここまですると、ナースに嫌がられたり・・。

質問(笠間):

 きちんと診断されず、手術されずに放置されてきたような特発性正常圧水頭症(iNPH)の場合、発症後「何年まで」なら、可逆性がある(手術の有効性が期待しうる)と考えられているのでしょうか?

 かつて、「正常圧水頭症」が積極的に手術された時期に検討されたデータでは、そのデータにかなりバラツキがあったと記憶しておりますのでご教授下さい。

回答:

 詳細なデータはありませんが、自験例では、発症後3年経過している方で、tap testが陽性でしたので、手術して、症状が改善した!というケースを経験しております。

 「何年経過しているか?」ということよりも、tap testが陽性であるのかそれとも陰性なのか!ということが、手術の有用性を判断するうえで一番重要な指標と考えております。

 石川正恒先生、丁重に回答して頂き、ありがとうございました。